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過去のメルマガ一覧 | 社会保険労務士法人ラポール|なにわ式賃金研究所

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空前の求人難、、、多様な働き方の提示で乗り切れるか?(2024.6月号)

●空前の求人難、、、多様な働き方の提示で乗り切れるか?(2024.6月号)


採用状況が逼迫しています。バブル期を上回る売り手市場となり、人手不足による倒産や縮小も現実のものになってきました。2,000年代に入ってから構造的に労働力人口が減っていること、コロナが明けて経済活動が回復していることが大きな要因かと思われますが、仮説として従来の働き方が崩壊してきていることも要因のように思われます。どういうことでしょうか?

皆さまは「タイミー」ってご存知でしょうか?最近はメルカリが「メルカリ ハロ」というのを開始したとの報道もありますが、いわゆる「スキマバイト」のマッチングアプリのことです。

いま飲食業を中心に猛烈に勢いを伸ばしているこれらの仕事マッチングアプリ。これらを利用する若者は昭和的な働き方とは無縁の人達です。自分が働きたいときだけ働き、即金でもらう。そんなことの繰り返しです。いわば日雇いバイトなのです。私のように古い人間から見ると信じがたい働き方ですが、これが受けているのです。

先ほど昭和的な働き方と言いましたが、これはつまり朝9時に出社して18時まではおり、月~金曜まで毎日働くモデルのことです。これが当たり前と思ってきましたが、「タイミー」で仕事を探す彼らは対極にいます。

そうすると現在の人手不足は労働力人口の絶対的な減少要因だけではなく、昭和的な従来の働き方へ応募する若者が相対的に減少していることも要因ではないかと考えられるのです。

ほとんどの企業が日雇いバイトで対応するのは無理があり、やはり昭和的な働き方を中心に考えざるを得ないとしても、単一の正社員モデルだけでなく、日雇いマッチングまでとは行かなくとも多様な働き方を提供して行かないと、乗り遅れるのではないかと考えられるのです。多様な雇用形態が登場してきています。従来の典型的な勤務シフトである毎日フルタイム勤務が静かに崩壊し出しているのです。


これからは好むと好まざるに拘わらず、求職者の多様な就労ニーズ、言いかえると「わがまま」に応えて行けるかどうかが人材確保の成否を分けることとなる可能性が高いのです。今まで企業は顧客のニーズ(わがまま)に対しては対応をしてきましたが、今後は求職者を顧客と見立てて、そのニーズに応えて行ける企業が、採用活動で生き残る企業になって行くのかもしれません。

企業の論理としては、毎日決まった時間に決まった人が働いてくれる方が、何かと都合が良いのは明らかです。しかし現代の多様化した求人ニーズに応えていかなければ、競り負けることとなってしまいかねません。では多様な働き方とはどんなものがあるのでしょうか?


取り上げる多様なな働き方のバリエーションは、
1.週休3日制
2.短時間正社員
3.兼業・副業
4.テレワーク
5.限定正社員(配置転換のない勤務地限定、職種変更のない職務限定、時間外労働のない時間限定)
6.時差出勤(全員一律出社に拘らず、段階的に出勤時間をずらす)
7.勤務インターバル(終業後から一定時間を空けること。例えば夜遅くまで残業した場合に、始業時刻をずらす)
8.フレックスタイム(自分で自由に勤務時間を決められる)
9.裁量労働制(自由出勤制)
です。


1.週休3日制

特に日曜日や祝日など、通常多くの人が休日である日に労働者を確保したいサービス関係業種は検討に値する方法です。その仕組みは簡単で、法で認められた変形労働時間制(1ヵ月または1年単位)を活用して、以下のような設計にします。

(1)1日の所定労働時間を10時間とする。
(2)1週に3日の休日を与える。
(3)出勤日に土日祝の日を入れる(マストではない)。
(4)就業規則を変更する。

これだけです。つまり人が集まり難い休日に出てもらう代わりに、週3日の休日を約束するのです。しかも1日10時間までは残業代もかかりません。おそらく家族と休日を合わす必要の薄い独身層や、休日の確保を重視する求職者には訴求力があるでしょう。こういった人の立場で考えれば、1回出勤すれば、10時間も8時間もさして変わりはなく、それなら休日が多い方を選択するはずです。しかも総労働時間は通常フルタイム勤務者と同じですから、給与体系を変更する必要もありません。


【求人広告記載例】
◎完全週休3日制社員募集!!1日10時間ですが、毎週必ず3日休めます(年間休日156日)!!
~給与水準は通常の正社員と同じです~

2.短時間正社員

正社員は毎日8時間で皆と同じ、という先入観に囚われる必要はありません。役割や人材活用の仕組みが同じなら、正社員であっても1日6時間勤務など、変化を付けても構わないのです。例えば小さな子どもを持つ労働者を例に考えて見ましょう。保育所への送り迎え、子どもの晩御飯の支度等々、通常の始業終業時刻で拘束されることは躊躇するでしょう。

そもそも現在の育児介護休業法では、1日6時間とする育児のための短時間勤務制度があり、既に全ての企業に義務付けられているのです。従って、フルタイム勤務には制約があるが、正社員として働きたいと考える層にとっては、この短時間正社員制度は魅力的に映るでしょう。但し、給与体系は通常の正社員と同じとはならず、削減される時間に比例して逓減させることとなります。


【求人広告規制例】
◎1日6時間  短時間正社員制度 あります!!
※小さなお子さんをお持ちの方、家庭や趣味と両立をしたい方に最適!!
※給与水準以外は、全てフルタイム正社員と同待遇です。

3.兼業・副業

従来は多くの企業で、兼業・副業は認めて来ませんでした。しかし政府では、この兼業・副業を企業に普及させる方向で考えており、今までは原則禁止にしていた厚生労働省のモデル就業規則でも、原則容認で改訂がなされています。

昨今、残業削減の影響で、実質賃金が目減りする人たちが発生しています。残業削減の中で、もっと稼ぎたいと思う方にとって、ちょこっと副業で稼げるのは魅力的でしょう。兼業副業には、労働時間の通算方法や、災害時の補償のあり方など複雑な部分もありますが、週2,3日とか、夕方以降だけでもシフトに入ってもらえれば助かるような企業には、検討の余地が有るかと思います。

【求人広告規制例】
兼業・副業をお考えの方、大歓迎!! 短時間、週2から3日相談
※本業の他に、ちょこっと収入を増やしませんか?
※配偶者控除の関係、生活保護の関係、兼業先との関係でたくさんは働けないけれど、少しだけ働きたい方には最適!!

4.テレワーク

情報通信機器が発達し、企画や製作、事務関係の仕事では、会社を離れて仕事ができる環境が整いました。コロナ下で導入した企業も多いと思いますが、ZOOMやチャットワークなどにより、遠隔地でもビデオ通話ができ、電話とFAXだけの時代では不可能だったことが出来る時代となったのです。テレワークとひと言で言っても、その形態は在宅勤務、サテライトオフィス勤務、モバイル勤務とありますが、その中でも在宅勤務は有力な検討候補の一つです。
育児や介護と仕事を両立させたいと考える人、通勤が困難な地域に居住する人などには、魅力的な働き方として映るでしょう。

【求人広告規制例】
◎事務員募集、テレワーク(在宅勤務)もOK!
~自宅に居ながら、好きな時間にお仕事可能。通信機器は貸与します~

(以下次号)

 

 

(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)

6月からの給与(賞与)計算は定額減税が導入されます(2024.5月号)

●6月からの給与(賞与)計算は定額減税が導入されます(2024.5月号)

 

本年6月以降に計算する給与又は賞与から定額減税が導入され、給与計算担当者は事務負担が増えますので、事前準備が必要となります。
今回はその概要と、事前準備に何が必要なのかということと、この問題に対する私見(愚痴)をお伝えします。

なお、定額減税は住民税においても行われますが、これは各自治体が通知してくる決定通知書により控除すれば良いだけで、所得税のように事務担当者が負担することはないため、今回は割愛します。
また所得税における今回の定額減税事務は最終的に年末調整において調整されますが、今回は年末調整は割愛し、月々の給与計算について解説します。

1.定額減税で給与計算する対象者

令和6年の合計所得金額が1,805万円(給与収入2,000万円)以下の国内居住者で扶養控除等申告書を提出しており(甲欄適用者)、かつ6月1日現在勤務している者
※但し合計所得金額が1,805万円(給与収入2,000万円)は12月に確定するものであるから、6月時点ではこれを超える見込みであっても一旦定額減税計算をする
※対象外となるのは乙欄及び丙欄適用者、6月2日以降入社した者、5月31日以前に退職した者
※甲欄適用者である従業員が定額減税の適用を受けるかを自分で選択することはできない

2.定額減税額

(1)本人 3万円  (2)同一生計配偶者及び扶養親族1名あたり3万円
 ※共に、本人の所得税額を限度とする
 ※例えば扶養親族のいない方であれば減税額は3万円、扶養親族が2名いれば減税額は本人分と併せて合計9万円

3.同一生計配偶者及び扶養親族とは

(1)同一生計配偶:令和6年12月31日時点で、本人と生計を一にする年間合計所得金額が48万円(給与収入103万円)以下の者
(2)扶養親族:令和6年12月31日時点で、本人と生計を一にする年間合計所得金額が48万円(給与収入103万円)以下の者で16歳未満の子を含む


ここで注意が必要です。これらの扶養家族のデータは、基本的に令和5年の年末調整時に提出してもらっている令和6年分扶養控除等申告書によって確認することとなるのですが、年末調整の対象となる配偶者または子と必ずしも一致しないからです。

扶養控除等申告書に記載された配偶者は源泉控除対象配偶者であり、今回の定額減税の対象となる同一生計配偶者とは異なります。
同一生計配偶:本人と生計を一にする年間合計所得金額が48万円(給与収入103万円)以下の者
源泉控除対象配偶者:本人と生計を一にする年間合計所得金額が95万円(給与収入150万円)以下の者


つまり配偶者の給与が103万円超から150万円の間であれば、年末調整時の扶養親族としては控除の対象にできるのですが、1人3万円の定額減税の対象者にはならないということです。ですから収入のある配偶者は103万円以下かどうかを確認する必要があります。

逆に年末調整時には控除の対象に出来なかった年少扶養親族(16歳未満の子)は、今回の1名3万円のR定額減税の対象者になります。この辺りがややこしいところで、きちんと扶養親族の仕分けが出来ていないと、誤った計算をしてしまう可能性がありますから要注意です。

例えばこのようなことになるのです。

(Aさん) 
本人年収500万円
Aの配偶者 年収150万円
子1名(小学生)        合計2名分で6万円の定額減税

(Bさん)
本人年収500万円
Bの配偶者 年収103万円
子1名(小学生)        合計3名分で9万円の定額減税 


また6月1日以降に扶養家族の増減があったとしても、それは年末調整または確定申告によって調整することになりますので、月次減税額を再計算する必要はありません。

逆に昨年の年末調整時に提出された令和6年分扶養控除等申告書には記載がされていなかった扶養親族がある場合はこの度新たに作られた「源泉徴収に係る減税のための申告書」に記載してもらうことにより把握することとなりますが、仮にこれが抜けていたとしても、最終的に年末調整で調整されるため、心配は要りません。

蛇足かも知れませんが、6月までに扶養親族の増加があってそれを見過ごしていたいたとしても、年末調整で還付額として反映されるため影響はそれほどないと思っていますが、逆に6月までに扶養親族の減少があってそれを知らずに扶養しているとして月次減税事務を実施した場合、年末調整時に追徴金となる可能性がありできればそれは避けたいはずなので、扶養親族が年初より減っている場合も要注意です。

4.実施方法   

6月以降に支払いのある給与または賞与から月次減税事務開始。6月で減税仕切れなかった場合は翌月以降の計算に順次繰り越して減税(これを月次減税事務という)

(例1)
減税枠 3万円(つまり扶養親族なし)を持っているCさん
毎月の所得税が35,000円
この場合は6月の給与計算で3万円を全額控除できるため次月以降の持越しはなしで、6月で終了

(例2)
減税枠 6万円(つまり扶養親族1名)を持っているDさん
毎月の所得税が10,000円
この場合は6月で引ききれないため、7月、8月と順次1万円ずつ繰越し(つまり6,7,8月は所得税ゼロ)、9月から通常通り10,000円を控除


ただこの月次減税事務は給与計算ソフトを使用している会社であれば、おそらくベンダー企業がシステム改良し、この度の定額減税に対応するものと考えられますが、ソフトを使用している会社は自分が使っているソフトが対応してくれるのか確認しておく必要があります。
ソフトを使用していない会社の場合は、国税庁が公開している「各人控除事績簿」によって管理して行くほかありませんが、結構面倒くさい管理になります。

蛇足ながら、、、、、

最初にこの制度を見た時は、「なんじゃ、こりゃ?」と思いました。なぜこんな複雑で面倒なことを年度の途中から始めるのか?結局最終的には年末調整で調整されるのであれば、年調時に一気にやってしまえば良いし、年内に控除しきれなかった定額減税額は来年自治体から給付されると聞いています。なら、最初から1名3万円のクーポン券を渡せば良いことです。
今年だけのためにややこしい制度を作り、分厚いリーフレットを印刷して全事業所に郵送しているのも無駄です。

増税眼鏡と揶揄され、低支持率にあえぐ岸田首相としては、解散前に何としても減税の恩恵を国民に感じてもらい、今後の政権基盤や解散総選挙を有利に導こうとする意図が見えます。そのために官僚に無理やり制度設計させた突貫工事といった印象です。給与事務担当者やベンダー企業、自治体職員はむしろいい迷惑でしょう。はなはだ愚痴っぽくなりましたが、、、、

 

 

(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)

障害者雇用を考える(2024年4号)

●障害者雇用を考える(2024年4号)

 

昨今、女性が男性と差がなく活躍できる環境づくりや、男性の育児休業取得率を上げることなど、企業求められている社会的責任は拡大していっています。その一つである、障がい者雇用については企業規模に応じて一定の人数の障がい者を雇用する義務が企業に課され、果たしていなければ納付金というペナルティが課されています。そのように重い責任が課されているものにも関わらず、障がい者雇用は進んでいるとは言い難いのが現状のように思いますので、私自身、精神障がい者の方の福祉の仕事で学んだ経験も踏まえて企業が障がい者雇用しやすくするための福祉施設側の取り組みや制度などをお伝えしていきたいと思います。

 

まず、現在の障がい者雇用制度ですが、企業の従業員数に2.3%という法定雇用率を掛けた人数(1未満の端数切捨て)を雇用する義務が課されており、この基準では43.5人(週20時間以上30時間未満のパートの方などは0.5人として計算)以上雇い入れている企業は1人は障がい者の方を雇い入れないといけないことになります。この2.3%の法定雇用率ですが、令和6年4月には2.5%、令和8年7月には2.7%となることが決まっています。また、業種によっては簡単に障がい者雇用を行えない企業もあるため、雇用義務人数を減らすため業種により除外率というものが定められているのですが、この除外率も令和7年4月以後引き下げが決まっており、より多く障がい者の方を雇用することが企業に求められます。そして、この法定雇用率を満たしていない企業については、不足している人数×5万円を国に納めることになるのですが、これは1カ月ごとの計算となるため1年間ずっと1人不足であれば5万円×12ヶ月=60万円の負担となります。ただ、現在この納付金を納めるのは従業員の人数が100人以上となっているため100人未満の企業については負担することはありませんが、義務は果たしていないこととなるため行政の指導が入る可能性が有り、また今後の100人未満の企業も納付金を納めるようになる可能性も否定できません。

 

そのように障がい者雇用の法定雇用率を満たしていない場合、企業には負担が生じる訳ですが、それでも法定雇用率を満たしていない企業は多い印象を受けます。その理由として、身体障がいであれば会社内の設備のバリアフリー化に係る費用の問題もあるでしょうし、知的障がいや精神障がいであれば何が起こるか分からないという不安もあると思います。また、限られた人数で回さないといけない中小企業では、一人がこなすことを求められる業務内容も多く、障がい者雇用の為だけに一つのポジションを用意する余裕がないことも障がい者雇用が進まない要因のように思います。

 そのように障がい者雇用を進めることが難しい企業側の事情もあると思いますが、実際に障がい者雇用をしたことが無く、イメージが先行して踏み切れないのであれば、障がい者福祉施設などを通して一度雇ってみると良いかもしれません。現在、障がい者の方の就労をサポートする為の施設として就労移行支援事業所等の施設があり、そこで毎日遅刻や早退せずに通えることをベースに、データ入力などのPCを使った作業や梱包などの身体を使う作業に一日取り組むことが出来るよう訓練を行っています。また、企業側にお願いして雇用ではなく実習として実際に企業で働き、適性を見てもらうこともしています。そのような訓練を経て福祉施設側も就職につなげようとしているため、実習でも有期雇用でも実際に障がい者の方を受け入れてみると、思っていたよりも雇用は大変ではないと感じてもらえるかと思います。もし、障がい者雇用をやってみようと思われる場合、やみくもにハローワークなどで募集を掛けるよりも、そういった福祉施設と協力して障がい者雇用を進めることが、企業にとっても障がい者の方にとっても良い職場環境につながると思います。

 

 最後に、障がい者雇用については法定雇用率が未達であれば納付金というペナルティがありますが、法定雇用率を超えて雇っている場合は超えている人数に応じて障がい者雇用調整金という報奨金のようなものもあります。また、初めて障がい者雇用を行う場合はいきなり正社員というのはお互いにとってリスクも大きいと思いますので、まずはトライアル雇用制度を利用して有期で雇用してみることで、その有期雇用の間はトライアル雇用助成金というものを利用できますし、その有期雇用での様子を見て正規雇用でもということになれば特定求職者雇用開発助成金という助成金も利用可能だったりするなど企業側にとっても一定のメリットはありますので、まだ取り組んだことが無ければ一度取り組んでみても良いかもしれません。

 

(文責 社会保険労務士 田中 数基)

2024年4月から雇用契約書の変更が必要となります(2024年3月号)

●2024年4月から雇用契約書の変更が必要となります(2024年3月号)

今年の4月以降に新たに締結する労働契約から、労働条件明示のルールが変更され、雇用契約書に新たに追加して記載する項目が増えます。概要は以下の通りです。

1.「就業場所」と「業務」の変更の範囲を追記すること(すべての労働者が対象)
2.更新上限の有無と内容を明示(有期契約労働者が対象)
3.無期転換申込機会と無期転換後の労働条件の明示(5年を超える有期契約労働者が対象)

以下順に見て行きます。

 

1.「就業場所」と「業務」の変更に範囲を追記すること(すべての労働者が対象)

 

(1)追記の対象となる労働者

正社員だけでなく、パート、有期契約者、派遣労働者、定年再雇用者などすべての雇用形態が対象となります。

(2)追記が必要になる時期

2024年4月1日以降に契約を締結したり、更新たりする時期より必要です。契約日が4月1日でも契約締結が3月中の場合は法的には追記の必要はありませんが、先んじて新ルールで行う方が望ましいと思います。

(3)追記が必要な明示事項

「就業場所」と「業務」の変更の範囲を労働契約締結時と、有期契約の更新時に書面で明示する必要があります。これは予め、就業場所や業務内容に異動がある可能性の有無を明示することにより、配転を巡って後々トラブルが起こらないようにする主旨であると考えられます。
よく「私は事務で雇われたので倉庫作業は関係ありません」とか、「私は自宅に近い営業所採用なので、本社には行きません」などというトラブルを避けるためです。

企業にとって都合の良い追記事例を以下に示します。

就業場所:(雇入れ直後)大阪営業所 (変更の範囲)会社の定める場所
職  種:(雇入れ直後)ルート営業 (変更の範囲)会社の定める業務


変更の範囲につき、もっと具体的に、例えば平野支店、八尾工場とか、検品出荷作業、営業事務などと記載する方が予測可能性が高いのですが、このように限定された記載であると、これら以外の場所や業務に就かせる場合にいちいち本人の同意が必要となるため、包括的な表現にしておく方が企業にとっては都合が良いかと思います。

但し職務または就業場所を限定する契約を結ぶ場合は、(変更の範囲)は「変更なし」と記載して頂くことになります。この場合も本人の同意がなければ異動を行うことはできません。


2.更新上限の有無と内容を明示(有期契約労働者が対象)


有期労働契約において更新の回数や年数に上限を設ける場合は必ず明示しなければならなくなりました。この明示できる年数の上限は5年以内となります。上限を定めない場合は追記の必要はありません。
この明示は最初の契約時のみでなく、有期契約の更新のタイミングごとに行う必要があります。

記載例は以下の通りです。

契約期間:令和6年4月1日から令和7年3月31日
     (1)更新する場合は以下の基準を満たす場合に更新する
       ※基準は割愛
     (2)例1 契約を更新する場合でも通算4年を上限とする
        例2 契約の更新回数は3回までを上限とする

また。今まで更新上限がなかったところ、これを新設する場合や、更新年数や回数を短縮しようとする場合は、必ずその事由を事前に説明することが必要となります。あくまでも説明であり、納得までは必要ありません。


3.無期転換申込機会と無期転換後の労働条件の明示(5年を超える有期契約労働者が対象)


(1)無期転換とは

同一の会社との間で、有期労働契約が5年を超えて更新された場合、有期契約労働者からの申し込みにより無期労働契約に転換されるルールです。パートが正社員に変わるという意味ではなく、あくまでも契約期間が有期から無期に変更されるというこです。申し込みがあった場合、会社はこれを拒否することはできません。


(2)明示の対象となる労働者

同一の会社で契約期間が5年を超える有期契約労働者が対象となります。仮に無期転換を行使しないと明言していても関係ありません。


(3)無期転換機会の明示

無期転換権が発生する契約更新のタイミングごとに、無期転換を申し込むことができる旨を追記する必要があります。これまでは有期契約労働者が自ら申し込んで来ない限り、会社の方から告知などの必要はなく、言わば受け身で良かったのですが、今後は会社の方からプッシュして行く必要が生じるということです。


(4)無期転換後の労働条件の明示

無期転換権が発生する契約更新のタイミングごとに、無期転換後の労働条件を明示する必要があります。要するに契約期間の他に変更される条件があるのかどうかを明示する必要があるということです。


(5)記載例

(3)及び(4)につき、会社にとって良いと考えられる記載例は以下の通りです。

※本契約期間中に会社に対し、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)の申し込みをすることにより、本契約期間の末日の翌日(●月●日)から無期労働契約に転換することができる。
※無期に転換した場合の労働条件は従前と同一とする。但し職務及び就業場所に限定がある場合は、これが解除され、異動を命ずることがある。また定年は60歳の誕生日とし、60歳以降で無期転換した場合は、定年を65歳の誕生日とする。適用される就業規則は●●規程とする。

最後に、そもそも中小企業においてはきちんと雇用契約書を交わさず、口頭で済ませているケースが散見されますが、今回の法改正を契機として、トラブルの無いようにきちんと書面を交わすようにしましょう。


(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)

2024年は経営計画に、「労務管理向上策」を盛り込もう その2

●2024年は経営計画に、「労務管理向上策]を盛り込もう その2
~経営を向上させるために労務管理を改善するための8つのポイント~ (2024.2月号)

さて、1月は「経営計画に、労務管理向上策を盛り込もう」と題して、その為に留意すべき8つのポイントがあるとお話しました。

企業業績向上のための、労務管理向上策8つのポイント
1.社長が明確な経営のビジョンを語り、従業員が共感すること(経営理念・方針)
2.人事の要諦、雇ってはいけないヒトを雇わないこと(募集・面接・採用)
3.職場のルールを明確にし、文書化すること(就業規則・雇用契約書)
4.労働法や労働社会保険の加入等法令を守ること(法令遵守)
5.賃金、人事評価などの人事制度を分かりやすく示すこと(賃金・人事考課制度)
6.コミュニケーションを重視し、モチベーションアップとトラブル防止を図ること(心の報酬)
7.従業員は自然に育たないので、強制と継続の仕組みで教育指導を行うこと(管理職研修・社員教育)

このうち、1から4は前回申しましたので、今回はその続きです。


5.賃金、人事評価などの人事制度を分かりやすく示すこと(賃金・人事考課制度)


中小企業の労務コンサルタントをしております経験上、人事制度を整備しなければならない理由は2つあると思っています。一つは、子供への円滑な事業承継のため、もう一つは有為な従業員を失わないためです。どういうことでしょうか?

まず子供への円滑な事業承継についてですが、大手企業とは違い、中小企業の事業承継は、ほぼ社長の息子さんが継がれます。他人が承継するケースはほとんどありません。これが現実です。そしてこれが、最も全うな事業承継の形であるとも考えています。何故なら、経営者の家系に育った子供は、有形無形に経営の薫陶を受けることができるからで、いわゆる親父の背中を見て育った財産は、反面教師の部分も含めて貴重な財産であるからです。サラリーマン家系の人材には、 残念ながらこれが伝わりません。

また企業経営は多くのリスクを取る事でもあるのですが、このリスクを他人に負わせるより、経営家系に育った子供が引き受けるのが、性(さが)だと思っているからです。
ただ、そうは言っても、2代目以降になって代が代わって来ると、どうしてもオーナー社長が持っている「カリスマ」や「オーラ」が弱まって行く傾向があります。今までは、オーナー社長がパワーで封じ込めたていたことが、通用しなくなっていくため、どうしても「制度や仕組み」で下支えする必要が出てくるのです。労務管理に関して制度や仕組みとは、賃金や評価制度等の人事制度がこれに当たるわけです。

もう一つの理由が有為な人材を失わないためです。

中小企業の組織風土に欠落しがちな要素に「適度な競争原理」と「上昇志向」があります。人材が活性化するにはこの二つは欠かせません。しかし新卒採用が少なく、同期やライバルがいないために競争原理が働きにくく、また将来、上の方へ上がって行ける道筋が整備されていないことと、モデルになる社員がいないことから、上昇志向を引き出すことも出来ず、有為な人材でも見切りを付けて辞めてゆくことがあります。

特に小規模企業の場合、ほとんどが同族経営で運営されています。ですからいくら頑張っても、経営家系でない限り、経営者の立場に上り詰めることはあり得ません。つまり社長を目指す!という人は、その会社で力を発揮する可能性はなく、仮に一時従業員であったとしても、その人には単なるステップアップの踏み台でしかありません。こういう人は引き留める人材というより、初めから割り切って考える必要のある人でしょう。

中小企業にとって必要なのは、経営を任せる後継者ではなく、部長をそつなく安定的にこなしてくれる、信頼のおける人材のことです。つまり経営者と同等の立場までは求めない、しかし会社のことを考えて仕事はして欲しい、かつ信頼できる存在であることが重要です。

ただ、こういった上昇志向のある人材も中小企業の場合、たくさんいるわけではありません。非常に限られた人材の中から、財産となる「人財」を育てて行かなければならないのです。会社を伸ばして行きたいのであれば、やはり信頼のおける部長の存在は欠かせないのです。

私自身もサラリーマンで数社の転職経験がありますが、残念ながら多くの中小企業には「将来に対する見える化」が充分ではありません。これを働く従業員の立場でみると、「今はいいとしても、年をとったときにこの会社でずっと頑張る意味があるのかな」とか、自分の先輩を見るにつけ「俺の50歳の姿はこの人と同じか・・・・・」となると、その潜在能力を発揮できないままに埋もれてしまうことになるのです。または転職する動機ともなるでしょう。

ここで注意が必要なのは、全従業員が必ずしも、上昇志向があるとは限らないことです。全員が人事制度によって上昇して行くというのは残念ながら幻想です。ここで大事なのは、ごく一部の限られた有為の人材を失わないことです。仕組みさえあれが、上の方へ上がって行ける可能性がある人材であるにもかかわらず、その仕組みがないため、埋もれてしまうとしたら会社にとっても本人にとっても不幸なことです。ですから「将来に対する見える化」が必要なのです。これが人事制度が必要な二つ目の理由です。
以上の視点から、もし人事制度が整備されていないとお考えでしたら、ここから改善して行きましょう。

6.コミュニケーションを重視し、モチベーションアップとトラブル防止を図ること(心の報酬)


ある意味、これが労務管理では一番大切なことかもしれません。これまでコンプライアンスや制度論をお話ししましたが、語弊を恐れずに言えば、法令や制度に多少の落ち度や杜撰さがあったとしても、「心の報酬」が担保されていれば、何とか上手くやって行くことができるからです。逆に言えば、これがなければ、何をやっても上手くいかないのです。

これに関して、従来から確立された実証理論があります。それはハーツバーグという臨床心理学者が唱えた二要因理論です。人間には不満要因と満足要因 があると言われています。満足に関わるのは、「達成すること」「承認されること」「仕事そのもの」「責任」「昇進」など。これらが満たされると満足感を感じるのですが、欠けていても職務不満足を引き起こすわけではありません。これらは「動機付け要因」と呼ばれます。

一方、不満に関わるのは「給与」「対人関係」「作業条件」など。これらが不足すると不満を引き起こしますが、満たされたからといっても満足感に繋がるわけではないとされています。単に不満足を予防する意味しか持たないという意味で「衛生要因」と呼ばれます。

私は常々「労務は感情、労務は心理学」と申しています。人間は感情を持った資源です。理屈や法律通りに動いているわけではありません。もし、職場のコミュニケーションに問題があるとお感じでしたら、如何にして心の報酬を与えることができるか、これを検討して行くことになります。

7.従業員は自然に育たないので、強制と継続の仕組みで教育指導を行うこと(管理職研修・社員教育)


社員教育も大切な経営課題の一つです。そしてこれに関しても二つのポイントがあります。一つは、強制すること、もう一つは継続することです。

結論から申し上げますと、中小企業の社員教育は、社員を信じて自主性に任せてはいけません。強制して追い込んで行く仕組みが必要なのです。特に管理職として期待する人材ほどそうしなければなりません。彼らはまともな人材ではあるのですが、決して自然発火はしないのです。いわばマッチと一緒。常に摺って火を点し続ける必要があるのです。つまり強制です。ところが意外にも、経営者は自主性に期待する傾向があります。気をつけたいものです。

継続も大切な要素です。残念ながら一度くらい研修を行ったくらいでは人は変わりません。大きな研修を単発でやるよりも、小さなものでも良いですから、繰り返し繰り返し行うことが大切です。繰り返すことによって、行動と思考パターンが徐々に変化して行くのです。

人の性格は変えられませんが、行動や思考方法は変化させることができます。また、特に中小企業にとっては、良い番頭を作れるかどうかが家業から企業になる分かれ目のような気がします。管理職の養成は非常に重要な経営課題であると言えます。

8.多様な人材の有効活用(高齢者、女性、障害者、外国人)


最近よく耳にするようになったダイバオーシティ・マネジメントのことです。和訳すると「多様な人材がいきいきと働ける職場環境を作ること」です。これは1企業の問題と言うよりも、日本社会全体に対する問題とも言えます。

今、日本社会は経験したことのない人口減少社会に突入しました。この問題に対応してゆくには、(1)移民を受け入れる、(2)AI(人工知能)化する、(3)現行労働者の生産性を上げる、(4)まだまだ眠っている女性や高齢者を掘り起こす、ことなのです。ダイバーシティ・マネジメントとはこのうち (4)に当るわけです。

少し大きいテーマですが、そう遠くない将来、こういった問題に対応できるかどうかが、企業の盛衰を左右して行くことになるのかも知れません。

労務問題は重要な経営政策ですが、後回しになりがちです。漠然と鳥瞰すると、どこから手を付けて良いかわかりません。今まで申し上げたことを切り口として、労務問題から経営を向上させる一助になれば幸いです。

 

(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)

2024年は経営計画に、「労務管理向上策」を盛り込もう その1(2024.1月号)

●2024年は経営計画に、「労務管理向上策」を盛り込もう その1
~経営を向上させるために労務管理を改善するための8つのポイント~ (R6.1月号)

企業経営の3要素として「ヒト、モノ、カネ」とはよく言われることです。しかし一般的に経営計画を作成するとき、「ヒト」に関する政策が抜け落ちていることが多いと感じています。確かに「ヒト」に関する改善活動は一番難しいものです。何故なら「ヒト」は「モノ」や「カネ」と違い、感情を持った動物で あり、心理的要素が成果に大きく影響するからです。

しかし3要素である「ヒト」に関する政策、言い換えれば労務管理の改善活動も経営計画に落とし込み、一つ一つ着実に向上させて行かなければなりません。労働分野は、大事だと分かっていながら、ややもすれば劣後に置かれ、おざなりに経過して行くことになり易いからです。


そこで今回は、経営計画を策定するに当って、「ヒト」に関する問題にアプローチしようとするとき、どこから手を付けるべきか、そのヒントになる大切な8つのポイントをお話ししたいと思います。

■企業業績向上のための、労務管理向上策8つのポイント■

1.社長が明確な経営のビジョンを語り、従業員が共感すること(経営理念・方針)
2.人事の要諦、雇ってはいけないヒトを雇わないこと(募集・面接・採用)
3.職場のルールを明確にし、文書化すること(就業規則・雇用契約書)
4.労働法や労働社会保険の加入等法令を守ること(法令遵守)
5.賃金、人事評価などの人事制度を分かりやすく示すこと(賃金・人事考課制度)
6.コミュニケーションを重視し、モチベーションアップとトラブル防止を図ること(心の報酬)
7.従業員は自然に育たないので、強制と継続の仕組みで教育指導を行うこと(管理職研修・社員教育)
8.多様な人材の有効活用(高齢者、女性、障害者、外国人)


順を追って見て行きます。

1.社長が明確な経営のビジョンを語り、従業員が共感すること(経営理念・方針)


経営理念を策定しておられる会社も多いことでしょう。「どのような会社にしたいのか」、「事業を通じてどのように社会に貢献するのか」などを定めることが多いと思いますが、経営理念とは、いわば「社長の思い」を文書化して見える化したものです。
この経営理念、従業員に落し込みするためには、「企業の目的は何か?」ということが明確になっていなければなりません。つまり「何の為に」ということです。これがぼやけると、すとんと腹落ちしないのではないでしょうか?

経営理念とは少し離れますが、「安全第一」という標語について、理念の落しこみを考えたいと思います。よく工場などで見かける標語ですが、この意味は何でしょうか?
これは安全があらゆることに最優先するというメッセージを、従業員に発しているということです。つまり、現場において「安全」と「効率」が競合する場面に 遭遇したとき、「効率」を落としてでも「安全」を優先して行動しなさいと言っているのです。この理念が落とし込まれていれば、現場は迷うことなく安全作業を優先します。迷ったとき、判断の指針が生まれることとなるのです。


会社は何の為に存在するのでしょうか? 仕事は何の為に行うのでしょうか?誰の為に行っているのでしょうか?「社長の思い」は、従業員に浸透していますか?
もしそうでなければ改善が必要ですので、どういう対策を打って浸透を図るべきかを計画に盛り込むようにしましょう。


2.人事の要諦、雇ってはいけないヒトを雇わないこと(募集・面接・採用)


人事の要諦は採用にあり、といっても過言ではないくらい大切なテーマです。特に中小企業におけるここでのポイントは、「優秀なヒトを雇う」ことではなく、 「雇ってはいけないヒトを雇わない」ことであると考えています。ヒトにおける2:6:2の法則というものがありますが、上位20%のスーパー社員を採用するのは難しいので、せめて下位20%のダメ社員を採用するミステイクを避けたいものです。つまり、真ん中の60%の普通のヒトを安定的に採用すれば、あとはそのヒトたちを活かすも殺すも経営者次第といったところでしょうか。


ここで普通の人の定義をしておきますと、「一般的社会人としての常識を持った人」ぐらいの意味です。所詮、面接ではその人のスキル(仕事に直接必要な技術や知識)は分かりません。しかし多くの中小企業の実態から推測すると、会社は特別にスキルの高い人を求めているというよりも、常識のある普通の人を求めていることが大半です。つまり、普通の人であればきちんと仕事のスキルは教えて行く気はあるのです。おおよその仕事はきちんと教えれば普通のヒトなら出来るものです。しかしそれ以前に、常識や生活態度から教えるとなると話は別です。これは家庭のしつけの問題だからです。ところがこういう人物が簡単に入ってくるから困るのです。


これを防ぐにはいくつかの方法があります。もし採用活動が弱いとお感じであれば、具体的にどのような方法で、募集、面接、採否決定して行くのかを検討して行くことになります。


3.職場のルールを明確にし、文書化すること(就業規則・雇用契約書)


ここでは主に就業規則や雇用契約書など書式の整備のことを言っています。特に就業規則はきちんと作りこんで運用していれば、経営の武器になることを認識し て頂きたいと思います。よく市販のモデルに社名を入れただけとか、助成金を受給するために作ったような就業規則をお見かけすることがありますが、これでは経営の武器になりません。

就業規則の効用を企業経営の立場から言い表すと、会社の防御機能であると言えます。労働法はその根幹に、強い経営者から弱い労働者を守る! という思想で貫かれています。ですから法的紛争になると、経営者は不利な立場に置かれることも少なくありません。

しかし就業規則は会社のルールを社長が一方的に定めることが許されているのです。この利点を活かさない手はありません。つまり「将来起こるかもしれない困ったこと」を出来るだけ多く想定し、それに具体的に対応できるものでなければならないのです。

例えば現代の企業経営において、メンタル不調者に対する対応は、中小企業においても必須の課題です。個人情報や営業機密漏洩防止のためには、電子機器やSNSへの対応も必要です。パワハラ、マタハラ等次々出てくるハラスメント問題・・・・・。

また雇用契約書、誓約書などの書式の整備も大切であり、こういったことの文書化により、会社の困ったことをかなり、防御することが可能になるのです。未整備な状態は、あたかも「ウイルスソフトの入っていないパソコン」のように危険な状態であると認識してください。

ルールの文書化が弱いとお感じでしたら、まずこのテーマから取り組みましょう。


4.労働法や労働社会保険の加入等法令を守ること(法令遵守)


まれにこのようにおっしゃる経営者に出会うことがあります。「労働法なんて守っていたら、会社が潰れる」。これは本当でしょうか?そのような会社を見たことがあってのことでしょうか?

少々辛口かもしれませんが、経営者がこれを言ってはダメだと思っています。何故なら、労務管理の改善はする気がないと言っているようなもので、「経営者の逃げ」だと思うからです。別に国のための法律を守るのではありません。企業経営の向上のためです。

自分の子供がサ就職する会社として相応しいですか?コンプライアンスは充分ですか?親の立場で安心して送り出せる職場ですか?


現代は20年前とは違い、IT技術の飛躍的進歩により、情報が容易に入手できます。20年前まではごく限られた知識人しか情報を持っていませんでし たが、今は誰もが知識人になり得ます。労働のように生活に密着した情報は、関心が高いものです。法令の不備を従業員が知らないことはないと考えるべきで、 表面化しないのは不満として言っていないだけ、と考えておいた方が良いでしょう。知らないのではなく、言わないだけなのです。
また社会保障の分野では、2016年からマイナンバーが開始されます。その目的は行政事務の効率化や国民の利便性の向上もありますが、その本丸は公正な社 会の実現、つまりきちんと収めるべきものは収めることにあります。社会保険料の指導調査も当然厳しくなって行くでしょう。

こういった社会背景の変化は、きちんと法令を守っている者が割を食う(かもしれない)社会から、きちんと法令を守っている者が生き残る、全うな社会 に移行して行くものと考えられます。生き残るためにも、法令遵守は大切な経営課題です。もし不備が多いとお感じなら、まず労務診断をして改善を図ってゆく こととなります。

(以下次号)



(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)

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