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困った社員がいる場合は、指導記録を残そう その1(2025.7月号) | 社会保険労務士法人ラポール|なにわ式賃金研究所

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2025年1月~12月

困った社員がいる場合は、指導記録を残そう その1(2025.7月号)

●困った社員がいる場合は、指導記録を残そう その1(2025.7月号)


私共は社労士事務所として、社員に関する様々なご相談をお受けしますが、その中で結構多いご相談が、問題社員に関するご相談です。トラブル社員、モンスター社員などいろんな言い方をされますが、同じものです。

これには大きく分けて3つの類型があります。

1.仕事自体ができない社員(遅い、ミスが多い、覚えが悪い、気が利かないなど)
2.執務態度が悪い社員、(協調性がない、自己主張が強い、自分勝手、反抗的、やる気が感じられないなど)
3.勤怠不良型社員(遅刻・欠勤が多い、直前での休暇請求、メンタルヘルスによる休職など)


今回はこれらのうち、1及び2の類型についての対応方法を考えたいと思います。といいますのも1と2の類型は基本的に同じ対応方法になるからです。では具体的に見てゆきましょう。


1.まずは試用期間で排除できるように、試用期間をきちんと運用する

これは問題社員のご相談をいただいた時には入社から結構時間が経過しており、何で今頃、と思うことがあるからです。試用期間で排除できる可能性があったのに、その機会を失っているケースが多いと推測されます。特に能力不足の場合は執務態度にように取り繕うことが難しいため、試用期間中に露見するケースが多いと思われます。

試用期間の意味や適切な運用方法については今まで何度も述べてきたところですが、最大のポイントは「本人が何をテストされているのかを認識し、そして会社も何をテストしているのかを理解してお互いに明確に合意しておくこと」に尽きます。

明確な合意とは採用前または採用初日に必ず、雇用契約書において「試用期間から本採用へ移行する基準」を明確に記載しておくことです。


【雇用契約書 記載例】歯科クリニックを想定

試用期間:令和●年●月●日(出勤初日)~令和●年●月●日(●か月間)

会社は次の各号の全てが充足された場合に限り、本採用へ移行する。本採用する場合は再度労働条件を見直す。

(1)院長の指示、医院のルールを遵守できること
(2)他の従業員と協調して職務を遂行できること
(3)無断欠勤、遅刻をしていないこと
(4)懲戒事由に該当するよう非行行為がないこと
(5)心身ともに健康であること
(6)患者(ご家族を含む)とトラブルがないこと
(7)不明なことは勝手に判断せず、院長に確認すること
(8)見直し、確認は必ず行うこと
(9)歯科衛生士としての基本的な知識・技術を有し、職務を円滑に行えること
(10)その他労働契約の本旨に従った労務の提供ができること


本採用する場合は再度労働条件を見直すとは、試用期間中は時給制にするとか、1日の勤務時間を1時間短くするとか、本採用後とは異なる条件にしておく方が良いでしょう。

このように合意した上で、試用期間満了時に基準を満たさない場合は、定着してしまった社員よりも、はるかに退職勧奨や解雇がしやすくなります。ただこの場合でも、試用期間中に基準を満たさない言動があった場合は、その都度口頭で指導し、本採用への移行が難しいと感じたのなら、試用期間終了の2週間前くらいに文書で警告しておいた方が良いでしょう。


【警告文書例】

〇〇殿   令和●年●月●日  株式会社■■

貴殿に対して、試用期間中のこれまでの勤務及び業務遂行状況に対して何度も口頭にて指導してきましたが、改善が見られないため、ここに文書で指導します。改善を求める下記の事項について試用期間満了日である●月●日までに改善してください。
難しいことを要求している訳ではありませんので、直ちに取り組んでください。改善しない場合は試用期間満了をもって解約し、本採用へは移行しませんのでここに申し添えます。

(改善を求める下記の事項については略)


2.問題があると認識したら黙認せず、まず口頭で数回注意をすること

これは試用期間に限らず、本採用後であっても問題があると感じているなら、黙認してはいけません。特に問題社員は、自分が問題行動を起こしているという自己認識が低いことが多く、むしろ自分は問題なくちゃんとやっている、と思っていることがあるのです。

それを黙認していると、問題行動を間接的に肯定していることになり、後から注意すると「なぜ今まで言われなかったのに、今頃急に言われなくてはいけないのか」と反省するどころか、逆に不信感を買うか、反抗的な態度を返してくる可能性があります。

(以下 次号)

 

(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)

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