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●2025.6月より 熱中症対策義務化について(2025.6月号) | 社会保険労務士法人ラポール|なにわ式賃金研究所

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2025年1月~12月

●2025.6月より 熱中症対策義務化について(2025.6月号)

●2025.6月より 熱中症対策義務化について(2025.6月号)

気象庁の季節予報によりますと2025年夏(6月~8月)の気温は例年に比べて高い予想だそうです。日本では、熱中症による労働災害の増加が増えてきており、そういったことも背景にあり、2025年6月1日から職場における熱中症対策が法的に義務化されます。これは、労働安全衛生規則の改正によるもので、事業者に対して以下の具体的な対策の実施が求められます。


■義務化される主な内容

改正労働安全衛生規則では、以下の3点が事業者に義務付けられます。

1. 報告体制の整備:熱中症の自覚症状がある作業者や、熱中症の恐れがある作業者を見つけた者が、その旨を報告するための体制を事業場ごとにあらかじめ定め、関係作業者に周知すること。

・報告の窓口の明確化:担当者や連絡先など事業場ごとに定め、関係作業者へ周知する
・複数の報告手段の確保:電話、専用アプリ、口頭など複数の報告手段を用意する。
・報告者氏名、対象労働者氏名、症状、意識の有無などを明確にすること。

2.実施手順の作成:熱中症の症状の悪化を防止するための措置について、実施手順を定め、周知すること。

・作業からの離脱:症状が見られた作業者を速やかに作業から離脱させる手順。
・身体の冷却:涼しい場所への移動や冷却材の使用など、身体を冷却する方法。
・医師の診察または処置:必要に応じて医師の診察や処置を受けさせる手順。
・緊急連絡網の整備:緊急搬送先の連絡先や所在地を含む連絡網の整備。

★参照「職場における熱中症対策の強化について」 厚生労働省
https://jsite.mhlw.go.jp/toyama-roudoukyoku/content/contents/002212913.pdf


3.関係者への周知:上記の体制や手順について、関係作業者に対して周知を徹底すること。

・朝礼やミーティングでの周知・伝達
・会議室、掲示板や休憩所などわかりやすい場所への掲示
・メールやイントラネットでの通知

※対象となるのは、暑さ指数WBGT ※ (湿球黒球温度)28度以上または気温31度以上の作業場で、継続して1時間以上または1日当たり4時間を超えて行われる作業です。


■ 罰則について

義務を怠った場合、労働安全衛生法第119条に基づき、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
当事務所HP(書式ダウンロードコーナー)にて「熱中症対策書 見本」がダウンロード出来ますのでご活用ください。
以前から暑さ対策については様々な対策を講じられているという会社を多く聞きます。もちろん暑さ対策がメインではありますが、人を雇用、採用するといったことにおいて働きやすい職場環境作りとうのは大切な要素となっているなと改めて感じる次第です。
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※WBGT:人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、人体の熱収支に与える影響の大きい 1.湿度、 2.日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、 3.気温の3つを取り入れた指標です。
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蛇足ですが、

今回、熱中症対策が罰則付きの強行法規になったことは、企業にとってリスクが高まったことを意味します。

〇刑事面において:

労働条件を定めた労働基準法と違い、人の命に関わる労働安全衛生法違反を犯し、かつその結果が重大である場合は、行政指導(是正勧告)を経ず、いきなり司法警察権を行使して犯罪捜査として扱い、検察庁に「厳重処分を求めます」との情状等に関する意見を付して送致することがあります(但し起訴されるかどうかは検察官の裁量によります)。
例えばプレス加工において安全装置を具備せず腕を切断する事故が起こったとか、高所作業において転落防止措置を取ることなく転落事故を起こして死亡したとか、安衛法に定められた措置を怠ったことが重大事故に関連している場合です。
今回の熱中症においても適切な対応手順を定めずに漫然とやり過ごし、その結果労働者が死亡したようなケースではそのような厳しい措置が取られる可能性が高まります。

〇民事面において:

今回の法改正による適切な措置を取っていなかった企業において熱中症により死亡事故や後遺障害が残った場合、本人やその遺族から高額な損害賠償を求められるリスクが高くなります。つまり安全配慮義務違反が成立しやすくなったといえ、億単位の紛争になる可能性があります。

このようなリスクに巻き込まれないためにも、適切に対応しておきたいものです。

(文責 社会保険労務士 坂口 将)

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