2026年1月~12月
2026年1月より下請法が改正されます(2026.1月号)
●2026年1月より下請法が改正されます(2026.1月号)
令和8年(2026年)1月1日から、「下請法」が改正され、「中小受託取引適正化法(通称: 取適法 とりてきほう )」として新たに施行されます。これにより、適用対象となる取引や事業者の範囲が拡大され、中小受託取引の公正化と受託側の中小企業の利益保護が強化されます。
近年、労務費や原材料費などのコストが急激に上昇している中、中小企業を始めとする事業者が賃上げの原資を確保し、適切な価格転嫁を定着させることを目指すために、取引の適正化と価格転嫁の促進を図る法改正が行われました。今回は従来の下請法の概要をおさらいしながら、改正内容について解説いたします。
■主な改正内容
1.用語の変更
法律名が「下請け代金支払遅延等防止法」(略称:下請法)から「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(略称:取適法)に変更
下請代金→製造委託等代金
親事業者→委託事業者
下請事業者→中小受託事業者
つまり、従来の親企業、下請という用語は法律上はなくなることとなります。
2.適用対象の拡大
(1)事業者の基準の見直し
これまでの資本金基準に加え、従業員数による基準が新たに追加されます。委託事業者・中小受託事業者が資本金基準又は従業員基準のいずれかの基準を満たす場合、取適法の適用対象となります(取適法とフリーランス法の両方に抵触する場合は、フリーランス法が優先されます)。
【製造委託・修理委託・特定運送委託・情報成果物作成委託・役務提供委託※の場合】
○委託事業者 ○中小受託事業者(個人を含む)
・資本金3億円超 → 資本金3億円以下
・資本金1千万円万円超3億円以下 → 資本金1千万円以下
・従業員300人超 → 従業員300人以下 ←今回の改正で追加
【情報成果物作成委託・役務提供委託※※の場合】
○委託事業者 ○中小受託事業者(個人を含む)
・資本金5千万円超 → 資本金5千万円以下
・資本金1千万円万円超5千万円以下 → 資本金1千万円以下
・従業員100人超 → 従業員100人以下 ←今回の改正で追加
役務提供委託※・・・プログラム作成、運送、物品の倉庫保管、情報処理に限る
役務提供委託※※・・・プログラム作成、運送、物品の倉庫保管、情報処理を除く
(2)対象取引の追加
従来の製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託に加え、新たに「特定運送委託」が追加されました。特定運送委託は、事業者が販売する物品や、製造や修理を請け負った物品などについて、その取引の相手方に対して運送する場合に、運送業務を他の事業者に委託する取引のことをいいます。これまでは独占禁止法の枠組みにより規制されていましたが、無償で荷役・荷待ちをさせられている問題などを受け、取適法の対象に追加されたものです。
3.禁止行為の追加
(1)協議に応じない一方的な代金決定を禁止
中小受託事業者から価格協議(値上げ)の求めがあったにもかかわらず、協議に応じなかったり、協議の申し出を無視したり、協議を理由なく繰り返し先延ばしにする場合は、違反になります。
(2)手形払い等を禁止
「手形の交付」や「電子記録債権や一括決済方式のうち、中小受託事業者が支払期日までに代金相当額の金銭と引き換え困難なもの」が禁止されます。
(3)面的執行の強化(相談窓口の拡大)
委託事業者との取引で、「価格協議に応じてもらえない」「代金が全然支払われない」など、取適法に違反しているのではと思ったときは、公正取引委員会だけでなく、事業所管轄省庁においても相談できるようになります。相談内容が委託事業者に知られることはありません。
(4)減額による遅延利息の支払い
正当な理由なく委託事業者が支払代金を減額した場合は、減額した日又は物品等の受領日から60日を経過した日のいずれか遅い日から減額分を支払う日までの期間の遅延利息を支払う義務が追加されました。
以上が主な改正点になります。これを踏まえて、委託事業者の義務と禁止事項の概要をまとめると以下の通りとなります。
■義務事項
(1)発注内容等を明示する義務
発注に当たって、発注内容(給付の内容、代金の額、支払期日、支払方法)等を書面又は電子メールなどの電磁的方法により明示すること
(2)書類等を作成・保存する義務
取引が完了した場合、給付内容、代金の額など、取引に関する記録を書類又は電磁的記録として作成し、2年間保存すること
(3)支払期日を定める義務
検査をするかどうかを問わず、発注した物品等を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で支払期日を定めること
(4)遅延利息を支払う義務
支払遅延や減額等を行った場合、遅延した日数や減じた額に応じ、遅延利息(年率14.6%)を支払うこと
■禁止事項
(1)受領拒否
中小受託事業者に責任がないのに、発注した物品等の受領を拒否すること
(2)支払遅延
支払期日までに代金を支払わないこと(支払手段として手形払等を用いること)
(3)減額
中小受託事業者に責任がないのに、発注時に決定した代金を発注後に減額すること
(4)返品
中小受託事業者に責任がないのに、発注した物品等を受領後に返品すること
(5)買いたたき
発注する物品・役務等に通常支払われる対価に比べ著しく低い代金を不当に定めること
(6)購入・利用強制
正当な理由がないのに、指定する物品や役務を強制して購入、利用させること
(7)報復措置
公正取引委員会、中小企業庁、事業所管省庁に違反行為を知らせたことを理由に、中小受託事業者に対して取引数量の削減・取引停止など不利益な取り扱いをすること
(8)有償支給原材料等の対価の早期決済
有償支給する原材料等で中小委託事業者が物品の製造等を行っている場合に、代金の支払日より早く原材料等の対価を支払わせること
(9)不当な経済上の利益の提供要請
自己のために、中小受託事業者に金銭や役務等を不当に提供させること
(10)不当な給付内容の変更、やり直し
中小受託事業者に責任がないのに、発注の取消しや発注内容の変更を行ったり、無償でやり直しや追加作業をさせること
(11)協議に応じない一方的な代金決定
中小受託事業者から価格協議の求めがあったにもかかわらず、協議に応じなかったり、必要な説明を行わなかったりするなど、一方的に代金を決定すること
(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)




