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障害者雇用を考える(2024年4号) | 社会保険労務士法人ラポール|なにわ式賃金研究所

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2024年1月~12月

障害者雇用を考える(2024年4号)

●障害者雇用を考える(2024年4号)

 

昨今、女性が男性と差がなく活躍できる環境づくりや、男性の育児休業取得率を上げることなど、企業求められている社会的責任は拡大していっています。その一つである、障がい者雇用については企業規模に応じて一定の人数の障がい者を雇用する義務が企業に課され、果たしていなければ納付金というペナルティが課されています。そのように重い責任が課されているものにも関わらず、障がい者雇用は進んでいるとは言い難いのが現状のように思いますので、私自身、精神障がい者の方の福祉の仕事で学んだ経験も踏まえて企業が障がい者雇用しやすくするための福祉施設側の取り組みや制度などをお伝えしていきたいと思います。

 

まず、現在の障がい者雇用制度ですが、企業の従業員数に2.3%という法定雇用率を掛けた人数(1未満の端数切捨て)を雇用する義務が課されており、この基準では43.5人(週20時間以上30時間未満のパートの方などは0.5人として計算)以上雇い入れている企業は1人は障がい者の方を雇い入れないといけないことになります。この2.3%の法定雇用率ですが、令和6年4月には2.5%、令和8年7月には2.7%となることが決まっています。また、業種によっては簡単に障がい者雇用を行えない企業もあるため、雇用義務人数を減らすため業種により除外率というものが定められているのですが、この除外率も令和7年4月以後引き下げが決まっており、より多く障がい者の方を雇用することが企業に求められます。そして、この法定雇用率を満たしていない企業については、不足している人数×5万円を国に納めることになるのですが、これは1カ月ごとの計算となるため1年間ずっと1人不足であれば5万円×12ヶ月=60万円の負担となります。ただ、現在この納付金を納めるのは従業員の人数が100人以上となっているため100人未満の企業については負担することはありませんが、義務は果たしていないこととなるため行政の指導が入る可能性が有り、また今後の100人未満の企業も納付金を納めるようになる可能性も否定できません。

 

そのように障がい者雇用の法定雇用率を満たしていない場合、企業には負担が生じる訳ですが、それでも法定雇用率を満たしていない企業は多い印象を受けます。その理由として、身体障がいであれば会社内の設備のバリアフリー化に係る費用の問題もあるでしょうし、知的障がいや精神障がいであれば何が起こるか分からないという不安もあると思います。また、限られた人数で回さないといけない中小企業では、一人がこなすことを求められる業務内容も多く、障がい者雇用の為だけに一つのポジションを用意する余裕がないことも障がい者雇用が進まない要因のように思います。

 そのように障がい者雇用を進めることが難しい企業側の事情もあると思いますが、実際に障がい者雇用をしたことが無く、イメージが先行して踏み切れないのであれば、障がい者福祉施設などを通して一度雇ってみると良いかもしれません。現在、障がい者の方の就労をサポートする為の施設として就労移行支援事業所等の施設があり、そこで毎日遅刻や早退せずに通えることをベースに、データ入力などのPCを使った作業や梱包などの身体を使う作業に一日取り組むことが出来るよう訓練を行っています。また、企業側にお願いして雇用ではなく実習として実際に企業で働き、適性を見てもらうこともしています。そのような訓練を経て福祉施設側も就職につなげようとしているため、実習でも有期雇用でも実際に障がい者の方を受け入れてみると、思っていたよりも雇用は大変ではないと感じてもらえるかと思います。もし、障がい者雇用をやってみようと思われる場合、やみくもにハローワークなどで募集を掛けるよりも、そういった福祉施設と協力して障がい者雇用を進めることが、企業にとっても障がい者の方にとっても良い職場環境につながると思います。

 

 最後に、障がい者雇用については法定雇用率が未達であれば納付金というペナルティがありますが、法定雇用率を超えて雇っている場合は超えている人数に応じて障がい者雇用調整金という報奨金のようなものもあります。また、初めて障がい者雇用を行う場合はいきなり正社員というのはお互いにとってリスクも大きいと思いますので、まずはトライアル雇用制度を利用して有期で雇用してみることで、その有期雇用の間はトライアル雇用助成金というものを利用できますし、その有期雇用での様子を見て正規雇用でもということになれば特定求職者雇用開発助成金という助成金も利用可能だったりするなど企業側にとっても一定のメリットはありますので、まだ取り組んだことが無ければ一度取り組んでみても良いかもしれません。

 

(文責 社会保険労務士 田中 数基)

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