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2024年は経営計画に、「労務管理向上策」を盛り込もう その2 | 社会保険労務士法人ラポール|なにわ式賃金研究所

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2024年1月~12月

2024年は経営計画に、「労務管理向上策」を盛り込もう その2

●2024年は経営計画に、「労務管理向上策]を盛り込もう その2
~経営を向上させるために労務管理を改善するための8つのポイント~ (2024.2月号)

さて、1月は「経営計画に、労務管理向上策を盛り込もう」と題して、その為に留意すべき8つのポイントがあるとお話しました。

企業業績向上のための、労務管理向上策8つのポイント
1.社長が明確な経営のビジョンを語り、従業員が共感すること(経営理念・方針)
2.人事の要諦、雇ってはいけないヒトを雇わないこと(募集・面接・採用)
3.職場のルールを明確にし、文書化すること(就業規則・雇用契約書)
4.労働法や労働社会保険の加入等法令を守ること(法令遵守)
5.賃金、人事評価などの人事制度を分かりやすく示すこと(賃金・人事考課制度)
6.コミュニケーションを重視し、モチベーションアップとトラブル防止を図ること(心の報酬)
7.従業員は自然に育たないので、強制と継続の仕組みで教育指導を行うこと(管理職研修・社員教育)

このうち、1から4は前回申しましたので、今回はその続きです。


5.賃金、人事評価などの人事制度を分かりやすく示すこと(賃金・人事考課制度)


中小企業の労務コンサルタントをしております経験上、人事制度を整備しなければならない理由は2つあると思っています。一つは、子供への円滑な事業承継のため、もう一つは有為な従業員を失わないためです。どういうことでしょうか?

まず子供への円滑な事業承継についてですが、大手企業とは違い、中小企業の事業承継は、ほぼ社長の息子さんが継がれます。他人が承継するケースはほとんどありません。これが現実です。そしてこれが、最も全うな事業承継の形であるとも考えています。何故なら、経営者の家系に育った子供は、有形無形に経営の薫陶を受けることができるからで、いわゆる親父の背中を見て育った財産は、反面教師の部分も含めて貴重な財産であるからです。サラリーマン家系の人材には、 残念ながらこれが伝わりません。

また企業経営は多くのリスクを取る事でもあるのですが、このリスクを他人に負わせるより、経営家系に育った子供が引き受けるのが、性(さが)だと思っているからです。
ただ、そうは言っても、2代目以降になって代が代わって来ると、どうしてもオーナー社長が持っている「カリスマ」や「オーラ」が弱まって行く傾向があります。今までは、オーナー社長がパワーで封じ込めたていたことが、通用しなくなっていくため、どうしても「制度や仕組み」で下支えする必要が出てくるのです。労務管理に関して制度や仕組みとは、賃金や評価制度等の人事制度がこれに当たるわけです。

もう一つの理由が有為な人材を失わないためです。

中小企業の組織風土に欠落しがちな要素に「適度な競争原理」と「上昇志向」があります。人材が活性化するにはこの二つは欠かせません。しかし新卒採用が少なく、同期やライバルがいないために競争原理が働きにくく、また将来、上の方へ上がって行ける道筋が整備されていないことと、モデルになる社員がいないことから、上昇志向を引き出すことも出来ず、有為な人材でも見切りを付けて辞めてゆくことがあります。

特に小規模企業の場合、ほとんどが同族経営で運営されています。ですからいくら頑張っても、経営家系でない限り、経営者の立場に上り詰めることはあり得ません。つまり社長を目指す!という人は、その会社で力を発揮する可能性はなく、仮に一時従業員であったとしても、その人には単なるステップアップの踏み台でしかありません。こういう人は引き留める人材というより、初めから割り切って考える必要のある人でしょう。

中小企業にとって必要なのは、経営を任せる後継者ではなく、部長をそつなく安定的にこなしてくれる、信頼のおける人材のことです。つまり経営者と同等の立場までは求めない、しかし会社のことを考えて仕事はして欲しい、かつ信頼できる存在であることが重要です。

ただ、こういった上昇志向のある人材も中小企業の場合、たくさんいるわけではありません。非常に限られた人材の中から、財産となる「人財」を育てて行かなければならないのです。会社を伸ばして行きたいのであれば、やはり信頼のおける部長の存在は欠かせないのです。

私自身もサラリーマンで数社の転職経験がありますが、残念ながら多くの中小企業には「将来に対する見える化」が充分ではありません。これを働く従業員の立場でみると、「今はいいとしても、年をとったときにこの会社でずっと頑張る意味があるのかな」とか、自分の先輩を見るにつけ「俺の50歳の姿はこの人と同じか・・・・・」となると、その潜在能力を発揮できないままに埋もれてしまうことになるのです。または転職する動機ともなるでしょう。

ここで注意が必要なのは、全従業員が必ずしも、上昇志向があるとは限らないことです。全員が人事制度によって上昇して行くというのは残念ながら幻想です。ここで大事なのは、ごく一部の限られた有為の人材を失わないことです。仕組みさえあれが、上の方へ上がって行ける可能性がある人材であるにもかかわらず、その仕組みがないため、埋もれてしまうとしたら会社にとっても本人にとっても不幸なことです。ですから「将来に対する見える化」が必要なのです。これが人事制度が必要な二つ目の理由です。
以上の視点から、もし人事制度が整備されていないとお考えでしたら、ここから改善して行きましょう。

6.コミュニケーションを重視し、モチベーションアップとトラブル防止を図ること(心の報酬)


ある意味、これが労務管理では一番大切なことかもしれません。これまでコンプライアンスや制度論をお話ししましたが、語弊を恐れずに言えば、法令や制度に多少の落ち度や杜撰さがあったとしても、「心の報酬」が担保されていれば、何とか上手くやって行くことができるからです。逆に言えば、これがなければ、何をやっても上手くいかないのです。

これに関して、従来から確立された実証理論があります。それはハーツバーグという臨床心理学者が唱えた二要因理論です。人間には不満要因と満足要因 があると言われています。満足に関わるのは、「達成すること」「承認されること」「仕事そのもの」「責任」「昇進」など。これらが満たされると満足感を感じるのですが、欠けていても職務不満足を引き起こすわけではありません。これらは「動機付け要因」と呼ばれます。

一方、不満に関わるのは「給与」「対人関係」「作業条件」など。これらが不足すると不満を引き起こしますが、満たされたからといっても満足感に繋がるわけではないとされています。単に不満足を予防する意味しか持たないという意味で「衛生要因」と呼ばれます。

私は常々「労務は感情、労務は心理学」と申しています。人間は感情を持った資源です。理屈や法律通りに動いているわけではありません。もし、職場のコミュニケーションに問題があるとお感じでしたら、如何にして心の報酬を与えることができるか、これを検討して行くことになります。

7.従業員は自然に育たないので、強制と継続の仕組みで教育指導を行うこと(管理職研修・社員教育)


社員教育も大切な経営課題の一つです。そしてこれに関しても二つのポイントがあります。一つは、強制すること、もう一つは継続することです。

結論から申し上げますと、中小企業の社員教育は、社員を信じて自主性に任せてはいけません。強制して追い込んで行く仕組みが必要なのです。特に管理職として期待する人材ほどそうしなければなりません。彼らはまともな人材ではあるのですが、決して自然発火はしないのです。いわばマッチと一緒。常に摺って火を点し続ける必要があるのです。つまり強制です。ところが意外にも、経営者は自主性に期待する傾向があります。気をつけたいものです。

継続も大切な要素です。残念ながら一度くらい研修を行ったくらいでは人は変わりません。大きな研修を単発でやるよりも、小さなものでも良いですから、繰り返し繰り返し行うことが大切です。繰り返すことによって、行動と思考パターンが徐々に変化して行くのです。

人の性格は変えられませんが、行動や思考方法は変化させることができます。また、特に中小企業にとっては、良い番頭を作れるかどうかが家業から企業になる分かれ目のような気がします。管理職の養成は非常に重要な経営課題であると言えます。

8.多様な人材の有効活用(高齢者、女性、障害者、外国人)


最近よく耳にするようになったダイバオーシティ・マネジメントのことです。和訳すると「多様な人材がいきいきと働ける職場環境を作ること」です。これは1企業の問題と言うよりも、日本社会全体に対する問題とも言えます。

今、日本社会は経験したことのない人口減少社会に突入しました。この問題に対応してゆくには、(1)移民を受け入れる、(2)AI(人工知能)化する、(3)現行労働者の生産性を上げる、(4)まだまだ眠っている女性や高齢者を掘り起こす、ことなのです。ダイバーシティ・マネジメントとはこのうち (4)に当るわけです。

少し大きいテーマですが、そう遠くない将来、こういった問題に対応できるかどうかが、企業の盛衰を左右して行くことになるのかも知れません。

労務問題は重要な経営政策ですが、後回しになりがちです。漠然と鳥瞰すると、どこから手を付けて良いかわかりません。今まで申し上げたことを切り口として、労務問題から経営を向上させる一助になれば幸いです。

 

(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)

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